じゃむ じゃむ 通信
2001 4・ 110
文字どうり三寒四温の日々が続きます。いかがおすごしですか。今回はいいお話しを2つお伝えします。
1つは、「ユージェニア・サポート・ネットワーク」という、日本の若者達のおよそ1年半におよぶ活動についてです。この活動を知ったのは知人からの1枚のFaxからです。「イタリアに留学している娘と友達がこんな活動を始めたので協力してもらえないか」という内容でした。事の始まりは、下宿の隣りの部屋に越してきたスロバキアからの留学生との出会いからです。質素な食事をしている彼女が気になり事情を聞くと、彼女の家はスロバキアでは有名な「ノウ”ォタ集団」という歴史的建造物を修復する仕事をしており、あとを継ぐため国際的に通用する修復家としての公的資格を得るための留学であること、その集団は歴史的建造物をそのまま修復するのではなく現代の技術を生かして修復する前衛的傾向があるため依頼者の理解に時間がかかること、それに加 えチェコ・スロバキア紛争により経済が不安定で支払いが遅れていること、そのため家からの仕送りは期待できない中の苦しい状況であることが分かります。飲み物とパンだけの食事をし、あらゆるものを節約して美術学校に通っている目の前のひたむきな少女に、何千年を経てきた歴史的遺産の存続が託されていると感じ取った日本からの留学生の活動がこうして開始されました。彼女の名前ユージェニアの名前をとって友人とネットワークを作り、語学とパソコンを使って、あらゆる国の人に支援を求めたのです。その間、支援者には援助金の使い道、ユージェニアの状況を書面で詳しく伝えてきました。基本的には「光熱費を含めた家賃と学校で必要な費用」を援助し、それ以外の「生活費」は本人自身がぎりぎりのやりくりをしていること、安く手にはいる本国から保存食や美術用具を含めた必要物品を、スロバキアの友人がイタリア・スロバキア間の長距離バスの運転手に託し、それを早朝・深夜にフィレンツエ中央駅前のバスターミナルで長い時間待つて受け取ること、最終学年では、実習やグループ制作などやりつつ教授に請われて工房で仕事の手伝いをし、卒業論文は同居のイタリア人のパソコンを借りて仕上げるという、朝から夜までほとんど休む間もない生活が描かれていました。そして新世紀1月、彼女が無事パラッツオ・スピネッリ美術学校を卒業したという最後のニュースレターが届きました。援助金の内訳、残金の使い道がきちんと添えられ、活動の問題や支援方法に悩みつつも、「決して援助に甘えることなく、自立を失わず、最低限の生活で、自分のやるべき事を精一杯こなしたユージェニアの精神力に支えられた」とあり、最後に、「支援者と彼女のつながりの中で感じてきた希望こそが、自分たちの留学生活の大きな糧であった」と結ばれていました。現在、ユージェニアはスロバキアに帰り、修復活動のみならず、国外取引先との通訳・交渉など多忙な日々を送っているとのことです。
もう1つも海の向こうのお話しです。知人とのふとした話しから、カルカッタで活躍している一人の医師の話しがでました。後日、インターネットから取り出した資料を見せてもらい驚きました。1980年代からカルカッタで活動をしていますから、マザーテレサと時・場所を同じく活躍していたことになりますが、その名を聞いたことはありません。彼の名はDr.Jack Pregerと言い、通称「Dr.Jack」とよばれています。思うところあり、彼が医学の道に進んだのは、青年期をとうに過ぎてからでした。アイルランドの病院に勤務中、バングラデッシュの紛争で難民救済のための医師を求めていることをラジオで知り、「気がついたら機上の人になっていた」と言います。そこでNGOと共に1979年まで7年間働き、事情があってカルカッタにはいります。その地に入るや、彼は医師として彼の全人生をその地に捧げる決意をし、たった一人で、必要な道具を持ち、1本の木の下に行き、ひっくり返したバケツに座って早速診療を開始します。それが現在の[Calcutta Rescue](以下CRと略)につながります。CRは貧困・無知と戦い、人種・階級・文化・宗教にかかわらず、医療と教育の援助をすることを理念とする組織的活動をしています。今では、4つのクリニックがそれぞれの役割を持ち、母子診療を中心にした家族計画の教育をしたり、罹病を中心にした治療をしたり、その他様々な疾病に対応しています。このCRの素晴らしいところは、2つの学校を持ち(建物が小さく2部制をとっているそうです)、読み・書き・手工芸などを子供達に教え、現実に生きていく力をつけ、カースト制度で縛られている意識改革を試みている点です。未来を動かしていると言っても言い過ぎではありません。こうした活動は彼の活動に賛助する世界各国の一般の人たちからの援助金とボランティアで成り立ち、その使途内訳も詳しく報告されています。資料の最後に各国の連絡センターが一覧表になっているのですが、日本のセンターは残念ながら有りませんでした。この資料を読んで、その活動もさることながら、印象に残った事が2つ有ります。1つは、この活動への援助方法が記してある箇所です。寄金・絵葉書や工芸品の購入・里親制度などいくつかの方法が並んでいる一番最後に「この活動に気づいてもらうこと」とあります。物の支援だけでなく、目に見えない想いの支援も、いつか力になって、この地球の何処かで手をさしのべるエネルギーに変わるかもしれないと言う人間への深く開かれた信頼感を感じさせるものです。そしてもう1つは、ボランティアを要請する箇所で、その資質として精力的であること・動機があること・1年間働けることなどの条件の1つに「ユーモアのセンスがあること」と明記されていることです。何事も一生懸命になりすぎてしまう気まじめさは、時にしなやかさを欠き、固苦しい雰囲気を作ってしまいがちな私たち日本人にはちょっぴり耳の痛い条件です。行動を前へ駆り立てる勇気や力は、そんな空気の軽やかな一瞬の揺らぎから生まれてくるのかもしれません。 同じ留学生として、何とか力になりたいというだけの動機から始めた「ユージェニア・サポート・ネットワーク」・・20代のうら若き女性達の無謀とも思えるその活動は、今や立派な修復家の活躍につながり、ヨーロッパの歴史遺産を後世に渡せる可能性を生み出しました。Dr,Jackのたった一人の診療から始まった「カルカッタ・レスキュー」・・・一人の医師の無償の活動が数知れない多くの人々の救いと希望になっています。地位があるわけでもそれを求めるめるわけでもなく、財力があるわけでもそれをもとめるわけでもなく、無名であるが名を求めるわけでもなく、結果を求めて動き出したわけでもない そんな人達からはじまった淡々とした活動・・・すごい人というのは、年齢・財産・地位・職業に関係なく、ふつうの生活の隠れたるところにいるものです。そしてふと周りを見渡せば・・・います、います。映画「ペイ フォワード」の副題のとうり、私たちは「可能の王国」に棲んでいるのかもしれません。
これからの アートスペース 予定
4月28日(土) 須田 千香良 チェロコンサート
19時 開 演 ピアノ 朴 敬二
プログラム G線上のアリア 白 鳥
Elegie マズルカ 他
6月23日(土) 高 杉 (こう さん)バイオリンコンサート
19時 開 演 ピアノ 益子 徹
9月 2日(日) 鳥山 敏子 さん 教育講演会
14時 開 演 「今、私たち大人に問われていること」 (仮題)
10月 日時 未定 山本 竹勇 津軽三味線 コンサート
11月10日(土) 馬 高彦 胡弓コンサート
19時 開 演
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